東京地方裁判所 平成11年(ワ)21562号 判決
原告 中外化学株式会社
右代表者代表取締役 三浦良雄
右訴訟代理人弁護士 遠藤誠
被告 株式会社新生銀行
(旧商号) 株式会社日本長期信用銀行
右代表者代表取締役 八城政基
右訴訟代理人弁護士 畠山保雄
同 松井秀樹
同 川俣尚高
同 大塚和成
主文
一 本件訴えを却下する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
債権者被告・債務者原告間の貸付金債権元本二億一九二〇万円及びその利息・損害金債権を、被告から株式会社整理回収機構(東京都中野区本町二丁目四六番一号、以下「整理回収機構」という。)に譲渡した旨の平成一一年八月一六日付け債権譲渡が無効であることを確認する。
第二事案の概要
一 本件は、金融再生委員会が金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(以下「金融再生法」という。)七二条四項に基づいてした被告の原告に対する貸付金債権元本二億一九二〇万円及びその利息・損害金債権(以下「本件債権」という。)が被告の保有する資産として適当でないとの判定(以下「本件判定」という。)が違法、無効であるとして、右判定に基づいてされた被告と整理回収機構との間の平成一一年八月一六日付け債権譲渡契約(以下「本件債権譲渡」という。)が無効であることの確認を求めた事案である。
二 前提事実
1 原告は、写真廃液の処理を業とする株式会社であり、第二部上場の中外鉱業株式会社(以下「中外鉱業」という。)の子会社である(弁論の全趣旨)。
2 中外鉱業は、平成七年七月二八日当時、被告に対し、残元本三億五二〇〇万円の借入金債務を負っていたところ、中外鉱業、原告及び被告は、右同日、三社の合意により、中外鉱業の右債務を原告が免責的に引き受ける旨の契約を締結した。
3 金融再生委員会は、平成一一年二月一六日から同月二三日までの間、金融再生法七二条四項に基づき、本件債権が被告の保有する資産として適当でないとの判定(本件判定)を行った(弁論の全趣旨)。
4 被告は、平成一一年八月一六日、本件判定に基づき、金融再生法七二条により本件債権を整理回収機構に譲渡(本件債権譲渡)した(争いがない)。
第三当裁判所の判断
一 確認の訴えにおけるいわゆる確認の利益は、判決をもって法律関係の存否を確定することが、その法律関係に関する法律上の紛争を解決し、当事者の法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切である場合(即時確定の利益のある場合)に認められるところ、本件債権譲渡の無効を確認したところで、その判決の効力は、当事者たる原告、被告間にしか及ばないから、原告は、債権譲受人たる整理回収機構から当該譲受債権の請求を受けた場合、本件判決をもって対抗できず、本件訴えは、原告の債務者としての地位の不安、危険を除去することができないものというべきである。
二 これに対し、原告は、本件債権譲渡により、原告は金融再生法上の要注意先ないし不良債務者の烙印を押され、かつその事実を金融業界に知られることにより、今後、正常な銀行取引から排除され、引いては倒産の危険を生じさせられており、このような不安、危険を除去するために、確認の利益があると主張する。しかしながら、確認の利益における即時確定の現実的必要が認められるためには、確認判決によって除去されるべき原告の利益ないし地位が、法的保護に値するだけの具体的ないし現実的なものでなければならないところ、原告主張の不安ないし危険は、本件判定によって、場合によっては生じるかもしれないという程度の事実上の影響であって、そもそも法的保護に値するだけの具体的ないし現実的な利益ということはできない。
三 また、その点を措くとしても、原告主張の不安ないし危険は、直接的には本件判定によって生じ得るものであって、本件債権譲渡によって生じるものではない上、本件判定の適法、違法は、本件請求の前提問題として理由中で判断される可能性があるにすぎず、これが既判力によって確定されるものでもないから、原告が、本訴請求である本件債権譲渡の有効無効に関する確認判決を得ることによって、原告主張の不安ないし危険が除去されることが当然に期待できるという関係にはない。
したがって、いずれにしても、本件訴えについては、確認の利益が認められない。
四 右によれば、原告の本件訴えは不適法であるから、これを却下することとする。
(裁判官 小磯武男)